埼玉県日高市。都心から少し離れた武蔵野の地に、1300年以上の長きにわたり、古代の系譜を静かに守り続ける神社があります。それが「高麗神社(こまじんじゃ)」です。
この神社は、「出世明神」として全国にその名を知られる強力なパワースポットでもあります。
なぜこの地に関東有数の古社が生まれたのか? なぜ「出世」の神様と呼ばれるようになったのか?
この記事では、高麗神社の歴史と伝承、そして実際に訪れるための具体的なアクセス方法までをご紹介します。
1300年前の「建郡」 高麗王若光の物語

高麗神社の歴史を語る上で欠かせないのが、御祭神である「高麗王若光(こまのこきしじゃっこう)」の存在です。
今から1300年以上前の奈良時代、716年(霊亀2年)。当時の朝廷は、関東7カ国(駿河、甲斐、相模など)に住んでいた高句麗(こうくり)からの渡来人1,799人を武蔵国に移し、新しく「高麗郡(こまぐん)」を設置しました。
この新たなる郡の長官(郡司)に任命されたのが、高句麗の王族の末裔であった高麗王若光です。
若光は、異郷の地で同胞たちを率い、未開の地であった武蔵野の開拓を指揮しました。彼は郡民に深く慕われ、その地で生涯を終えました。若光の没後、郡民はその徳を偲び、彼の霊を守護神として祀ったのが、高麗神社の創建の由来です。
驚くべきことに、その子孫である高麗氏が、中世、近世、そして現代に至るまで、代々神社の宮司(神職)を世襲しているのです。現在、その系譜は60代目にまで及んでいます。
なぜ「出世明神」なのか? 歴代総理大臣と知られざる逸話
高麗神社が「出世明神」と呼ばれるようになったのは、実は古代からの伝承ではなく、近代(明治・大正・昭和期)に入ってからのことです 。
そのきっかけは、高麗王若光の「未開の地を開拓し、人々を率いて統治を成功させた」という史実に惹かれた、多くの著名な政治家たちの参拝でした 。
- 浜口雄幸
- 若槻禮次郎
- 斎藤実
- 鳩山一郎
彼らは皆、高麗神社に参拝した後、相次いで「内閣総理大臣」の重責に就任しました 。
このことから、「高麗神社に参拝すると出世できる」という評判が政界・官界・財界へと広まっていったのです 。法曹界でも、最高裁判所長官や検事総長に就任した人々が参拝していたことが知られています 。
高麗神社の「出世」とは、単なる棚ぼた的な幸運ではありません。それは、異郷の地で困難な「開拓」という大事業を成し遂げた御祭神・高麗王若光の御神徳にあやかり、自らも困難な職責を全うしようと誓う、「指導者の誓いの場」としての側面が強いのです。
異国の風を感じる「将軍標」

高麗神社を訪れたら、ぜひ注目していただきたいのが、駐車場や境内の入口に立つ「将軍標(しょうぐんひょう)」です 。
これは、御祭神の故郷である朝鮮半島において「チャンスン(長丞)」と呼ばれる風習に由来するものです 。村の入口などに立てられ、魔除けや道標の役割を果たす、日本の道祖神にも似た存在です 。
また、境内裏手には、神職を務めてきた高麗氏の旧住居である「旧高麗家住宅」があります 。これは17世紀頃の建築と推定される茅葺きの入母屋造りで、東日本に残る民家としては非常に古い形を遺していることから、国指定重要文化財にも指定されています 。

高麗神社へのアクセスガイド

公共交通機関(電車・バス)でのアクセス
最も一般的なルートは、JR線の「高麗川駅」を利用する方法です。
- 推奨ルート:
- JR川越線・八高線「高麗川駅(こまがわえき)」下車
- 駅から徒歩で約20分
- 駅からタクシーで約5分
- 注意ルート:
- 西武池袋線・秩父線「高麗駅(こまえき)」からもアクセス可能ですが、こちらは徒歩で約45分ほどかかりますのでご注意ください。
- バス利用:
- バス停「四本木(しほんぎ)」または「栗坪(くりつぼ)」から徒歩約17分 。
車でのアクセス
高速道路を利用する場合、圏央道からのアクセスが便利です。
- 最寄りIC: 圏央道「狭山日高IC」から約25分
- 駐車場:
- 参拝者用の無料駐車場が完備されています。
- 収容台数は約650台〜750台と非常に広いため、安心して利用できます。
基本情報(位置情報・参拝時間)
- 名称: 高麗神社(こまじんじゃ)
- 所在地: 〒350-1243 埼玉県日高市新堀833
- 電話番号: 042-989-1403
- Googleマップ: 高麗神社の位置情報
- 参拝時間:
- 境内: 終日開放
- 社務所(お守り・お札・御朱印の受付): 8:30~17:00
- ご祈願受付: 8:30~17:00
さらに深く知るための参考文献
高麗神社の歴史は非常に深く、その背景を知れば参拝も一層意義深いものになります。現在の宮司様が監修・執筆された書籍は、その歴史を知る上で最適です。
- 『まんが高麗王若光物語』(まんが:比古地朔弥、協力・監修:高麗文康)
- 高麗神社の歴史や若光の生涯が、まんがで非常に分かりやすく描かれています。高麗家の60代目当主である宮司様ご本人が監修されています。
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- 『陽光の剣―高麗王若光物語』(著者:高麗文康)
- 高麗神社60代宮司の高麗文康氏ご自身が執筆された歴史ロマン小説です。高句麗の滅亡から日本への渡来、高麗郡の建郡に至るまでの若光の生涯が、壮大な物語として描かれています。
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