【牛馬童子像】熊野古道の小さなアイドル「牛馬童子像」に会いに行こう!時を超えた物語を秘めた石像の謎

和歌山県

牛馬童子とは?

世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」。その一部である熊野古道は、うっそうとした杉木立と苔むした石畳が続き、歩くだけで心が洗われるような神聖な道です。歴史ファンはもちろん、最近なんだかお疲れ気味…という方にも、ぜひ訪れてほしいパワースポット。

そんな熊野古道・中辺路(なかへち)ルートに、旅人たちを魅了してやまない小さなアイドルがいるのをご存知ですか?その名も「牛馬童子像(ぎゅうばどうじぞう)」。

今回は、この愛らしい石像が秘める、歴史と伝説、そして感動の物語を紐解きながら、実際に会いに行くための完全ガイドをお届けします!

森の中にたたずむ、不思議でかわいい石像

「牛馬童子口」バス停から歩いていくと、木漏れ日が差し込む静かな森の中に、その石像はひっそりとたたずんでいます 。高さわずか50cmほど 。牛と馬、二頭の動物にまたがる童子の姿は、なんともユニークでかわいらしく、思わずカメラを向けたくなるフォトジェニックな存在です 。  

でも、なぜ牛と馬なのでしょう?そして、この童子はいったい誰なのでしょうか?

その正体は悲劇の天皇?知ればもっと面白い、牛馬童子像の秘密

実はこの像、平安時代に悲劇的な運命をたどった第65代天皇、花山法皇(かざんほうおう)の熊野詣の旅姿を模したものだと伝えられています 。藤原氏の策略により19歳で退位・出家した法皇は、その後、信仰の道を歩みました 。その伝説が、この小さな像に込められているのです。  

しかし、驚くべきことに、この像が作られたのは古の時代ではなく、なんと明治時代 。古い伝説に敬意を払い、近代の人々が作り上げた記念碑だったのです。古代の物語と近代の想いが交差する、まさに時を超えたシンボルと言えるでしょう。  

周辺に広がる「花山法皇」の物語をたどろう

牛馬童子像の魅力は、像そのものだけにとどまりません。この像が立つ場所を中心に、花山法皇にまつわる伝説が、まるで物語の地図のように広がっています。

箸折峠(はしおりとうげ)

像が立つこの峠の名は、花山法皇が食事の際に箸がなく、近くの萱(かや)を折って箸代わりにしたという伝説に由来します 。  

近露(ちかつゆ)

近くの集落の名は、法皇が折った萱の茎から血のような赤い汁が滴るのを見て、         「これは血か、それとも露か(血か露か)」と尋ねたことから名付けられたと言われています 。  

牛馬童子像を訪れることは、ただ石像を見るだけでなく、風景に刻まれた壮大な物語を追体験する旅でもあるのです。

悲劇を乗り越えた「再生」のシンボル

多くの人々に愛されてきた牛馬童子像ですが、実は悲しい出来事を経験しています。       2008年、何者かによって頭部が切断され、持ち去られるという衝撃的な事件が起こりました 。   地元の人々の悲しみは深く、大規模な捜索が行われましたが頭部は見つからず、やむなく複製された頭部が取り付けられました 。  

しかし、物語はここで終わりません。事件から約2年後、なんと失われたオリジナルの頭部が、10km以上も離れたバス停で奇跡的に発見されたのです 。  

現在、道端に立つ像は複製された頭部をつけた姿ですが、発見されたオリジナルの頭部は、その傷跡と共に文化財の尊さを伝える「証人」として、和歌山県立博物館などで大切に保管・展示されています 。破壊という悲劇を乗り越え、二つの姿で私たちにメッセージを伝え続ける、まさに「再生のシンボル」なのです。  

さあ、牛馬童子像に会いに行こう!【アクセス&モデルコース】

物語を知ると、ますます会いに行きたくなりますよね。初心者でも気軽に楽しめるアクセス方法とモデルコースをご紹介します。

アクセス方法

  • 公共交通機関の場合 JR「紀伊田辺駅」から龍神バス(熊野本宮方面行き)に乗車し、約50~60分。「牛馬童子口」バス停で下車すぐです 。  
  • 車の場合 国道311号線沿いにある「道の駅 熊野古道中辺路」の駐車場を利用するのが便利です。バス停にも隣接しています 。  

Googleマップ

和歌山県田辺市中辺路町近露 箸折峠・牛馬童子像 (住所:和歌山県田辺市中辺路町近露 )  

おすすめウォーキングコース

  • 【初心者向け】サクッと満喫コース(約1.5時間)
    • ルート:牛馬童子口バス停 → 牛馬童子像 → 近露王子
    • 距離:約1.3km~2.0km  
    • 熊野古道の雰囲気を味わいながら、ハイライトである牛馬童子像と、かつての宿場町の面影を残す近露王子を巡る、初めての方にぴったりのコースです 。  
  • 【健脚向け】じっくり堪能コース(約2~3時間)
    • ルート:牛馬童子口バス停 → 牛馬童子像 → 近露王子 → 継桜王子
    • 距離:約5.2km~6.7km  
    • 近露の里を抜け、さらに古道を進みます。ゴール地点の継桜(つぎざくら)王子では、巨大な杉の木々が立ち並ぶ神秘的な空間が待っています。近くには名水百選に選ばれた「野中の清水」もあり、古の巡礼者たちのように喉を潤してみてはいかがでしょうか 。  

小さな石像に秘められた、何層にも重なる深い物語。牛馬童子像は、ただの観光スポットではありません。訪れる人々の心に、静かに、そして力強く語りかけてくる特別な存在です。ぜひ、あなたも熊野古道を歩き、その声に耳を澄ませてみてください。

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