【和銅遺跡】日本の貨幣経済が始まった「奇跡の銅」献上の地

埼玉県
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皆さんは、日本の歴史上、初めて流通した本格的な貨幣「和同開珎(わどうかいちん)」の原料が、どこから来たかご存知でしょうか。その答えは、埼玉県の山間、秩父市黒谷地区にある「和銅遺跡」です。

この地は、西暦708年に高純度の自然銅が発見され、朝廷に献上されたことで、日本の歴史を一夜にして動かした奇跡の場所。今回は、古代律令国家の野望と信仰が息づく、和銅遺跡とその周辺の史跡を巡る旅へとご案内します。


708年の大事件と「和銅」改元

和銅遺跡の歴史的価値は、飛鳥時代末期にあたる西暦708年の出来事に集約されます。

この年、武蔵国秩父郡から、精錬の必要がないほど純度の高い自然銅が発見され、朝廷へ献上されました。これは「和銅奉献」と呼ばれ、当時のヤマト王権にとっては、まさに国家の独立と威信に関わる「慶事」でした 。  

当時の日本は、唐(中国)にならった律令国家建設を急いでいましたが、自前の貨幣を造るための戦略物資である銅の安定供給が課題でした。そこに現れた秩父の銅は、この問題を一気に解決する切り札となったのです。

第43代元明天皇は、この銅の発見を祝し、即座に元号を「慶雲」から「和銅」へと改元する詔を発しました 。そして同年8月、この秩父産の和銅を原料として、かの有名な日本最古の流通貨幣「和同開珎」の鋳造が開始されたのです 。  


古代の採掘現場と「銭神様」の神社

和銅遺跡周辺には、和銅奉献の物語を今に伝える貴重な史跡や信仰の場所が点在しています。

和銅採掘露天掘跡と巨大モニュメント

実際に自然銅が採掘された場所が、和銅採掘露天掘跡です 。  

ここは秩父鉄道の和銅黒谷駅の東側にある小高い山(祝山)の山腹に位置し、露天掘りの跡が残されています。離れた場所からも、岩肌には歴史的意義を顕彰するために描かれた巨大な「和銅」の大文字を見ることができます 。  

遺跡の麓には、往時の偉業を記念し、巨大な「和同開珎」のモニュメントが設置されています。現在は安全上の理由から、露天掘跡の上部や沢への立ち入りは禁止されていますが、このモニュメント横から岩肌を見上げる形で、そのスケールを感じることができます。

  • 施設名(付近): 和銅遺跡 和同開珎モニュメント
  • Google Maps 位置情報: 和同開珎  

聖神社(ひじりじんじゃ) 銭神様

和銅遺跡から徒歩圏内に鎮座するのが、聖神社(ひじりじんじゃ)です。和銅献上に深く関わるこの神社は、古代の鉱山開発における精神的な中心地でした。

この神社は、現在では「銭神様」として知られ、金運上昇や商売繁盛を願う参拝者が全国から訪れるパワースポットとなっています 。  

  • ご神宝に見る鉱山信仰:
    • 和銅石・和同開珎銭: 採掘当時の自然銅(和銅石)や、実際に鋳造された和同開珎銭がご神宝として収められています 。  
    • 和銅製のムカデ: 雌雄一対の和銅製ムカデ像もご神宝です。ムカデは「お足(お金)」に通じ、また勇猛な性質から、古来より鉱山師や武家に信仰されてきた、鉱山守護の象徴です 。  
  • 施設名: 聖神社
  • 所在地: 埼玉県秩父市黒谷2191  

アクセスガイド

和銅遺跡は、歴史探訪と豊かな自然、ハイキングを同時に楽しめるエリアです。

【公共交通機関を利用する場合】

遺跡の最寄り駅は、秩父鉄道の「和銅黒谷駅」です。

  • 主要ルート:
    1. 西武鉄道利用: 池袋駅から特急で西武秩父駅へ(約80分)。そこから徒歩で秩父鉄道の御花畑駅へ乗り換え、秩父鉄道で「和銅黒谷駅」へ向かいます。
    2. 秩父鉄道利用: JR高崎線・熊谷駅から秩父鉄道で「和銅黒谷駅」へ(約70分) 。  
  • 駅からのアクセス: 和銅黒谷駅のホームには和同開珎のモニュメントがあります 。
    • 聖神社まで:徒歩約5分  
    • 和銅遺跡(露天掘跡)まで:聖神社から徒歩約15分  

(注:駅名は、和銅奉献1300年を記念し、2008年4月1日に「黒谷駅」から「和銅黒谷駅」に改称されました 。)  

【車を利用する場合】
  • 主要ルート:
    • **関越自動車道「花園IC」より国道140号を経由し、秩父方面へ(約35km) 。  
    • 圏央道方面からは、国道299号を経由し、飯能・正丸トンネルを抜けるルートがあります 。  
  • 駐車場: 聖神社周辺に参拝者用の駐車スペースがあります。

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